風俗トラブルの事件発生から解決までの流れ
性欲という欲望に任せた軽はずみな行動によって、風俗トラブルという思わぬトラブルに発展することがあります。
ここでは、風俗トラブルの種類と、解決までの流れについて解説していきます。
目次
風俗トラブルでよくあるケースと刑事罰
風俗トラブルとは、風俗店の利用方法やサービスの提供を受けた際に生じるトラブルのことです。
ここでは、風俗トラブルの中でも起きやすいトラブル例と、起こしてしまった場合に科されうる刑事罰についてご紹介します。起きやすいトラブル例としては以下の4つがありますが、特に多いのが「本番行為の強要」と「盗撮行為」です。なお、男性向け風俗店のケースが多いため、以下では男性を主体とした記述を行いますが、近年は女性向け風俗店の店舗数も増加しており、風俗トラブルは男女問わずリスクがあることに注意しましょう。
- 本番行為の強要
- 盗撮行為
- 過剰なサービスの強要
- 18歳未満の者からのサービス
本番行為の強要
「本番行為」とは、性交すること(男性器を女性器に挿入すること)、セックスのことです。挿入時間や射精の有無は関係なく、挿入した時点で「本番行為」に該当します。
風俗店について次のように理解している方もいらっしゃるでしょう。
「風俗店にはいくつか種類があって、ソープ(ソープランド)は本番行為ありで、デリヘル(デリバリーヘルス)やイメクラ(イメージクラブ)は本番行為なしで・・・。」
しかし、この理解は正確ではなく、売春防止法によると、女性従業員(風俗嬢)との本番行為は店の種類に問わず違法行為であり、禁止されています。売春防止法2条と3条は次のように規定しています。
売春防止法第2条【定義】
「この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。」
同法第3条【売春の禁止】
「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。」
売春防止法2条によると、金銭等の授受を約束して行う本番行為を「売春」と定義し、同法3条では売春をしたり、売春の相手方となったりすることは誰であっても禁止されていることを意味します。たとえソープランドでも女性従業員との本番行為は違法行為ということになります。
ただし、同法3条は罰則規定がない、いわゆる訓示規定です。女性従業員との本番行為は売春防止法3条により禁止されて違法行為ですが、この規定に違反して本番行為を行ったからといって刑事罰が科されるわけではない、ということになります。売春防止法は管理売春や、売春の勧誘行為・周旋行為(取り次ぎ)などを摘発する法律で、このような行為を行う店舗側は売春防止法違反で罰則を受けることはあります。店の利用者として女性従業員と本番行為を行っても、売春防止法違反で罰則を受けることはありませんので、ご安心ください。
しかし、本番行為が刑事事件に発展する可能性はゼロではありません。女性従業員が嫌がっているケースなど、女性従業員と同意・合意なく、本番行為に及ぶと「強制性交等罪」(旧強姦罪。刑法177条)に該当する可能性はあります。本番行為を禁止している店舗・サービスで、女性従業員に対して殴る・押さえつけるなどの行為によって無理やり本番行為を強要すると、刑事罰が科される可能性は高いということです。近年の刑法改正により、「強制性交等罪」という名称に改められるとともに、法定刑が「5年以上の有期懲役」という重い刑罰になりました。未遂の場合にも刑罰の対象であり(刑法180条)、万一ケガをさせてしまうと「強制性交等致傷罪」(刑法181条2項)によって、さらに重い刑罰が科されることになります。
風俗店は個室で密室空間が多いため同意・合意の立証が難しく、特に強制性交等事件では女性側の主張が認められやすい傾向にあります。本番行為を禁止している店舗・サービスで、「本番行為も許される」と勘違いして、女性従業員の明確な同意・合意がないまま本番行為を行い、風俗トラブルに発展するケースは少なくありません。逆に、店舗側あるいは女性従業員自身が同意・合意がある雰囲気を演出して、後で強要された主張し、示談金や慰謝料を求める悪質なケースもあります。後者のケースは店舗側・従業員側に問題があり、このようなケースでは「強制性交等罪」に問われないことは当然ですが、女性側の必死の主張が災いして冤罪事件に発展するおそれがあります。
盗撮行為
女性従業員や性交時の様子などを盗撮する行為は、各都道府県で定められる迷惑防止条例に違反する可能性があります。また、実際に盗撮しなくとも、盗撮目的でカメラ等を設置するなどの行為によっても処罰の対象となります。福岡県の迷惑防止条例によると、盗撮行為を行った場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」、常習として違反した場合は「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です(福岡県迷惑行為防止条例(2019年度改正))。
また盗撮した写真・動画等をインターネット上にアップしたり、販売したりした場合は「わいせつ電磁的記録媒体陳列罪」(刑法175条1項後段)が成立し、「2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料、または懲役および罰金の両方」が科される可能性があります。
迷惑防止条例に違反しない軽微なケースでも、軽犯罪法違反(1条23号違反)に該当する可能性があります。軽犯罪法違反の場合は「1日以上30日未満の拘留または1000円以上1万円未満の科料」が科されます。
特に近年は、スマートフォンや高性能小型カメラ等の普及や情報技術の急速な発達等によって盗撮行為が行いやすくなり、また写真・動画等をインターネット上にアップする悪質なケースが増えています。店舗側や捜査当局が盗撮行為に対して厳格な対応をとるケースも少なくないため、軽はずみな行動は避けた方がよいでしょう。
過剰なサービスの強要
多くの店舗では、本番行為の禁止とともに従業員が提供できるサービスの範囲を明示しています。この明示された範囲に従わず、無理やり過剰なサービスの提供を求める行為はわいせつ行為を強要したとして「強制わいせつ罪」(刑法176条)に問われる可能性があります。また、わいせつ行為に限らず従業員の嫌がる行為を強要することは「強要罪」(223条1項)に問われる可能性もあります。
例えば、店舗や従業員が全裸によるサービスは提供していないと明示しているのに、そのようなサービスを強要する行為や、性的サービスを行っていない店舗で雰囲気にのまれて陰部を触るよう強要する行為などは、強制わいせつ罪が成立する可能性があります。また、前述した強制性交等罪は性交に限らず、「肛門性交」(肛門に男性器を挿入すること。アナルセックス)または「口腔性交」(口または舌で相手の性器を刺激すること。オーラルセックス)の場合にも適用されます。これらの行為を強要すると、強制わいせつ罪よりも重い強制性交等罪が成立する可能性があります。「以前はサービスしてもらえた」という経験から、明示された範囲に従わずに強要すると刑事罰が科されるリスクがあるので注意しましょう。
18歳未満の者からのサービス
女性従業員が18歳未満であることを知りながら性的サービスを受けた場合は、児童買春・児童ポルノ禁止法(「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」)における「児童買春」(同法4条)や、各都道府県の青少年保護育成条例違反に該当する可能性があります。前者の「児童買春」の場合は「5年以下の懲役または300万円以下の罰金」が、後者の福岡県青少年健全育成条例違反では「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されることになります。
もっとも、事前に知らされているケースなどは別として、女性従業員が18歳未満であると容姿等で判断することは難しく、知らないまま性的サービスを受ける場合もあります。このような場合は刑事罰の対象となりませんが、念のため本人や店舗に確認しておくというのもよいでしょう。悪質な店舗では、「警察に被害届を出す」と脅して示談金や慰謝料等を請求するケースがあるため、注意しましょう。
上記4つのケースの他にも、女性従業員を妊娠させてしまったケースや、女性従業員に行為を抱きストーカーに発展してしまうケースなどがあります。
刑事手続きの一般的な流れ
ここでは、刑事手続きの一般的な流れについてご紹介します。そのトラブルで実際にどのような刑事手続きがとられるかは事案によるため、ご不安な方はまずは弁護士に相談することをおすすめします。
逮捕
風俗トラブルが発生し、被害者や店舗側が被害届の提出などを行ったことをきっかけに捜査が開始します。捜査によって加害者を特定し、犯罪を行ったと十分に疑われ、逃亡・証拠の隠滅(隠したり壊したりすること)の危険があるため逮捕の必要がある場合は、警察官に逮捕されます。警察官は被疑者(犯罪を行ったと疑われる者。「容疑者」のこと)を逮捕すると、48時間以内に検察官に書類や証拠物とともに身柄を送らなければなりません(検察官送致、送検)。
検察官は、送致を受けてすぐに被疑者を釈放することもありますが、さらに身体拘束が必要だと判断した場合は24時間以内に裁判官に対して勾留を請求します。
勾留
勾留が認められると、原則として10日間、必要があればさらに最大10日間(合計最大20日間)の身柄拘束を受けることになります。身柄拘束期間は逮捕段階のもの(約3日間)も合わせると最大で23日間にも及びます。
この勾留期間中は留置場などの施設で身柄を拘束されることになりますが、基本的に家族等の外部の者と面会(接見)することができます。しかし、事件によっては面会を許すことで家族等に証拠の隠滅などを指示されるリスクが高いと判断されて、面会を制限される(接見禁止)場合があります。なお、弁護士に弁護を依頼することはどの段階でも行うことができ(逮捕段階や接見禁止処分がなされている場合でも可)、選任された弁護士は「弁護人」として弁護活動を行うことができます。詳しくは後述しますが、刑事手続きの早い段階から弁護士に依頼することで、さまざまな弁護活動を行うことができるため、出来るだけ早い段階で依頼するようにしましょう。費用面などで依頼が困難な場合は、当番弁護士制度や国選弁護人制度の利用を検討しましょう(利用できる時期に注意)。
捜査機関から逮捕・勾留の必要がないと判断されると身柄拘束を受けずに済みます(いわゆる「在宅事件」)。逮捕・勾留による身柄拘束は日常生活に多大な支障を来すため、数回の呼び出しに応じれば済む在宅事件の方が好ましいといえます。しかし、在宅事件の場合は捜査機関に制限がなく数か月に及ぶこともあり、いつ逮捕事件に切り替わるか不安に駆られることでしょう。また在宅事件であるからといって起訴されないとは限らないため、在宅事件であってもできる限り早い段階で弁護士に依頼するようにしましょう。
起訴・不起訴
「起訴」とは、刑事事件について裁判所に審理を求めることをいい、検察官が行います。起訴された段階で、被疑者は「被告人」と呼ばれるようになります。
他方で、裁判所に事件の審理を求める必要がなく、被疑者の身柄を釈放することを「不起訴」といいます。不起訴になるケースとしては、以下のものがあります。
①犯罪を行った疑いがないケース(「嫌疑なし」)
②犯罪を行ったことを立証する証拠が不十分なケース(「嫌疑不十分」)
③犯罪を行った事実があり、証拠も十分だが、被疑者の年齢や境遇、性格、犯罪の内容、更生の可能性などの諸事情を考慮して、検察官の裁量により起訴を見送るケース(「起訴猶予」)
日本の刑事裁判では有罪率が99.9%以上であるため、起訴されて刑事裁判になるとほぼ間違いなく有罪となります。有罪判決が確定すると前科が付き、また執行猶予が付与されなければ懲役刑や罰金刑などの刑罰が執行されます。そのため、起訴される前に出来る限り弁護活動を尽くして不起訴処分を勝ち取ることが重要となります。
なお、被疑者が事実を認めていて検察官も軽微な罰金刑相当と考えている事件では「略式起訴」が行われ、通常の刑事裁判よりも簡易的な手続きで刑事処分が決められます。略式起訴が行われた場合でも正式な裁判を求めることもできます。
刑事裁判
起訴されると、公開法廷で刑事裁判(公判)が開かれます。公判では、被告人が犯罪行為を行ったことを検察官が証拠を提示して立証します。刑事裁判では、犯罪行為を行ったかどうか(有罪か無罪か)や、犯罪行為が証明された場合にどのような刑罰を科すか(刑の重さ(量刑))を審理します。審理が尽くされたと裁判所が判断した場合は判決を言い渡し、その判決に不服がある者は上級裁判所にさらなる審理を求めることができます(上訴)。有罪判決が確定すると前述の通り前科が付き、実刑判決(執行猶予がつかない判決)であれば刑罰が科されます。無罪判決であればすぐに釈放されます。
刑事裁判に要する期間は1回の公判で終了する事案もあれば、複雑な事件の場合は数年以上かかる大きな事案もあります。上訴などを行えば判決が確定するまでにさらに期間を要することになるでしょう。
風俗トラブルで実際に逮捕されるのか
事案にもよりますが、実務上は風俗トラブルで逮捕されるケースはほとんどありません。しかしこれは、「風俗トラブルが発生しても放置してよい」というわけではなく、刑事事件化する前に当事者間で話し合いが行われ、金銭的解決が行われた結果です。
被害者である女性従業員・風俗店は、悪質な事案は別として、加害者に対する厳正な刑事処分よりも、金銭的な解決を望んでいるケースがほとんどです。風俗トラブルが発生したとしても、示談を成立させることで迅速にトラブルを解決することができます。性犯罪では被害者の処罰感情が重視されているため、警察などの捜査当局は被害届や告訴を受理した後でも、当事者間での解決を促すことが多くあります。
しかし、風俗トラブルを起こした証拠があるのに賠償に一切応じないケースなどでは、被害届が提出され、逮捕されるリスクが高まるといえるでしょう。逮捕・勾留されてしまうと上記のような長期間の身柄拘束を受け、また起訴されてしまうと前科や刑事罰が科されるおそれがあります。風俗トラブルでは、いかに迅速に示談を成立させるかがカギとなります。
風俗トラブルを弁護士に相談するメリット
風俗トラブルが発生した場合は弁護士に相談することをおすすめします。風俗トラブルを弁護士に相談するメリットは、以下の点が挙げられます。
- 相手方との示談交渉を任せられ、適切な条件で示談できる
- 家族や職場に知られることなく解決できる
相手方との示談交渉を任せられ、適切な条件で示談できる
弁護士に示談交渉を依頼することで、相手方との交渉をすべて弁護士に任せることができます。
当事者間同士では冷静な話し合いを行いづらく、特に風俗トラブルでは反社会的勢力と思われるような強面の店員から強い口調で言い寄られることがあります。相手の弱みに付け込んで脅迫・恐喝まがいの行為を行い、不当な額の慰謝料・示談金を請求してくる悪質な業者もあります。法律に精通した弁護士が交渉を行えば、店舗側もそのような強い態度で迫ることが難しくなるため、弁護士が味方になってくれることは、非常に心強いといえるでしょう。
また、刑事事件に精通した弁護士に依頼することで、その事案に見合った適切な条件(示談金の額や、後で再請求されないための条項など)で示談を成立できるよう尽力してもらえます。先を見通した対応を行ってくれるため、将来の新たなトラブルを未然に防止することができます。弁護士が代わりに交渉を行ってくれることで、店舗側から免許証・保険証のコピーや名刺を取られることがないため、個人情報の流失を防ぐこともできます。
家族や職場に知られることなく解決できる
風俗トラブルが発生すると、悪質な業者から家族や職場に連絡すると脅して法外な要求を突きつけるケースがあります。周囲の人に風俗トラブルが露見すると、これまで積み上げてきた信頼関係が崩壊するおそれがあります。特に家族には辛く悲しい思いをさせ、家庭崩壊を招くリスクもあります。
しかし、弁護士が交渉を代理することで、店舗側が家族や職場へ連絡すると脅した場合でもその行為の違法性を指摘し、連絡を止めさせることができます。また、示談交渉の際に今回のトラブルを外部に漏らさない旨と、それに違反した場合の違約金に関する条項を示談書に盛り込むことで、風俗トラブルを外部に知られるリスクを最小限に抑えることができます。
刑事事件でお困りの際は当事務所へご相談ください。
以上のように、風俗トラブルでお困りの際は弁護士に相談することをおすすめします。大明法律事務所は風俗トラブルをはじめとするさまざまな刑事事件に対応しております。お困りの際は当事務所までご相談ください。
大明法律事務所は、博多、天神、早良区、城南区、北九州市を中心に、刑事事件に関するさまざまなご相談を承ります。
当事務所は、いつでも気軽に相談できるよう、電話、メール、HPお問い合わせフォーム、LINEなど複数のお問い合わせ方法をご用意し、24時間体制でご相談を受け付けております。
初回相談は30分無料です。刑事事件でお悩みの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。
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